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業界の裏側

【業界向け】元請から値切られたときに出す1枚の資料

外構社長
外構社長 @gaikou_nomiss 2026年9月13日

値切られるのは、うちが高いからではありません。こちらが「なぜこの金額なのか」を出せていないからです。元請の担当者も、意地悪で削っているわけではありません。上から与えられた予算に収めるために、いちばん説明のない行から削っているだけです。だから、説明のある行を作れば削られません。二十年この業界にいて、値切りの場で強いのは口の上手い人ではなく、紙を1枚持ってきた人でした。今日はその1枚の中身を書きます。

値切りが通る会社と通らない会社の差は、交渉の上手さではない

現場で見ていると、同じ金額を出しても、すんなり通る会社と、必ず「もう少し何とかならんか」と言われる会社に分かれます。違いは金額ではありません。金額の出し方です。

通らない会社の見積りは、行が少ないです。「外構工事一式」「ブロック積み一式」で終わっている。これを見た相手は、中身が分からないので、総額を見て「1割引けるか」と言うしかありません。中身が分からないものは、パーセントでしか削れないからです。

元請さんから「よそはもっと安いで」と言われました。その場で返す言葉が出てこなくて、持ち帰りますとしか言えませんでした。

持ち帰って正解です。あの場で下げると、次からその金額が基準になります。返す言葉が出ないのは口下手だからではなく、手元に根拠の紙がないからです。

逆に、行が細かく分かれていて、それぞれに数量と単位が入っている見積りは、パーセントで削れません。削るなら「この行を外す」と言うしかない。行を外すという話になった瞬間、値切りは値引き交渉ではなく、工事の範囲を決める打ち合わせに変わります。ここまで持っていければ、こちらの負けはありません。

出す1枚に載せるのは、この4つだけ

分厚い資料は要りません。A4が1枚です。私が用意させているのは次の4つです。

1. この現場に何人が何日入るか

人工です。職種と人数と日数を書きます。「基礎屋2人×3日、ブロック工2人×4日、土間3人×1日」。これだけで、相手は工事の重さを想像できます。ここに、公表されている労務単価を並べておきます。国土交通省が2026年2月17日に公表した公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)では、全職種の加重平均が1日25,834円、とび工が30,780円、普通作業員が23,605円です。公共工事の積算に使う単価なので民間の請求額そのものではありませんが、「人を1日動かすといくらか」の共通のものさしとしては、いちばん通りがいい数字です。

大阪であれば、最低賃金が2026年10月1日から時給1,231円になることも添えます。前年は1,177円でした。これはこちらの都合ではなく、外から動いている数字です。相手も同じニュースを見ています。

現場の人間からすると、人工の話をされると反論しにくいんですよ。3人でやる仕事を2人でやれとは、さすがに言えませんから。

2. 現場に固有の条件

前面道路の幅、搬入経路、既存物の有無、高低差、隣地との距離。よその現場と単純に比べられない理由を、事実で書きます。「よそはもっと安い」に対する答えは、値段の話ではなく、現場が違うという話です。

たとえば、4tが入らない現場は、それだけで運搬と小運搬が増えます。既存のブロックを壊す現場は、解体とガラの処分が乗ります。この2行を先に書いておけば、あとから「聞いてない」も起きません。

3. 外したときに何が起きるか

これがいちばん効きます。削れる行の横に、削ったときに起きることを1行ずつ書いておくのです。「ワイヤーメッシュを外す→割れたときに全面やり直し」「残土処分を減らす→敷地内に土を残す。仕上がりの高さが上がる」。

こう書いてあると、相手は自分で判断できます。判断できる材料を渡すと、たいていの元請は削りません。削ったときに責任が自分に来ることが分かるからです。

あとで割れて呼ばれるのは現場です。外すなら外すで、誰が決めたかを紙に残しておいてもらわんと困ります。

4. 下げられる幅と、その代わりの条件

ゼロ回答は出しません。出すと次がありません。ただし、下げるなら必ず交換条件をつけます。着工日をこちらの都合に合わせてもらう、支払いサイトを短くしてもらう、二期工事をまとめて出してもらう。金額だけを一方的に下げると、相手の中では「あの会社は言えば下がる」という記憶しか残りません。

この1枚に、書いてはいけないもの

原価の内訳をそのまま見せてはいけません。仕入れ率、掛率、職人さんへの支払い単価。ここを出すと、次からその数字を基準に積み上げを組まれます。1回の交渉で勝って、その先ずっと負ける形です。

出すのは「何人・何日・どの条件」であって、「いくらで仕入れているか」ではありません。工事の重さは見せる、商売の中身は見せない。この線を引けるかどうかが、長く付き合える元請かどうかの判断にもなります。

経理から見ていると、値引きを飲んだ現場は、あとから追加工事で取り返そうとして結局揉めることが多いです。最初に断ったほうが安く済んでいます。

1枚が毎回すぐ作れるかどうかは、日々の数字で決まる

ここまで読んで、「そんな資料を毎回作る時間がない」と思った方が多いと思います。そのとおりで、値切られたその日に一から作るのは無理です。作れる会社は、普段から現場ごとに人工と原価が出ているから、その日のうちに1枚にできるだけです。

私たちが外構工事は儲かるのに、なぜ手元に残らないのかで書いたのと同じで、月末に締めてから出てくる数字では、交渉には間に合いません。日報で現場ごとの人工が溜まっていれば、1枚は15分で作れます。私たちが使っているGAIQO GENBAのような現場管理の仕組みでも、狙いはそこです。人工と原価がその日のうちに現場に紐づいていれば、値切りの場で出す紙は、もう手元にあります。

見積りを出すまでの速さも同じ話です。見積りが遅い会社は、なぜ利益も薄いのかで書いたとおり、遅い会社は根拠を後から作っているから遅い。先に根拠があれば、見積りも交渉資料も速くなります。

それでも下げろと言われたら

最後は、断る覚悟の話になります。人を1人増やすのにいくら要るかは外構業で人を1人増やすとき、いくら売上が要るかに書きましたが、粗利が出ない現場を数で埋めると、忙しいのに残らない会社になります。

断り方は簡単です。「この金額でしたら、この範囲でお受けします」と、範囲のほうを動かして返すことです。金額を動かすと信用が減りますが、範囲を動かすのは提案です。同じ「下げません」でも、受け取られ方がまったく違います。

値切りを断るのは、相手を選ぶことでもあります。根拠を出して、それでも数字だけを言ってくる相手は、工事が始まってからも同じことを言います。

まとめ

  • 値切られるのは高いからではなく、削る理由を相手が探せるほど行が粗いから
  • 出す1枚に載せるのは4つ。人工/現場固有の条件/外したときに起きること/下げられる幅と交換条件
  • 公表数字を使う。公共工事設計労務単価は全職種加重平均25,834円、とび工30,780円、普通作業員23,605円(令和8年3月適用・国土交通省2026年2月17日公表)。大阪府の最低賃金は2026年10月1日から1,231円
  • 原価の内訳・仕入れ率は出さない。工事の重さは見せて、商売の中身は見せない
  • 1枚を15分で作れるかどうかは、普段から現場ごとに人工と原価が出ているかで決まる
  • 断るときは金額ではなく範囲を動かして返す

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