【業界向け】職人が辞める会社と辞めない会社、現場で何が違うか

職人が続かない、という相談が年々増えています。求人にお金をかけて、やっと一人入って、半年でいなくなる。それを何度かくり返して、採用そのものをあきらめてしまった会社を私はいくつも見てきました。
辞めているのは、入ってすぐの人たち
先に業界全体の数字を見ておきます。厚生労働省が令和7年10月15日にまとめた資料「建設労働をめぐる情勢について」によると、令和6年の建設業の入職率は11.7%、離職率は10.0%で、3年ぶりに入る人のほうが多くなりました。業界としては、ぎりぎり増えている側にいます。人がまったく来ない時代ではありません。
問題は中身のほうです。同じ資料に載っている新規学卒者の3年以内離職率を見ると、令和3年3月に高校を出て建設業に入った人は43.2%が3年以内に辞めています。全産業の38.4%より高い。ところが大学を出て建設業に入った人は30.7%で、こちらは全産業の34.9%より低いんです。
学歴の話をしたいのではありません。若くして現場に入った人ほど、最初の3年で抜けているという一点だけを見てください。辞められている会社は、入り口で失敗しているのではなく、入ったあとの3年で失敗しています。

社長、うちも辞めるのは1年目か2年目がほとんどです。3年続いた子は、そのあとずっと残ってます。

どこの会社もそうです。3年もつかどうかは本人の根性ではなく、その3年に会社が何を用意したかで決まります。
辞める理由は、給料の手前に3つある
辞めた理由を聞くと、たいてい「給料」と返ってきます。ただ、本当に給料だけが理由なら、同じ地域で同じ常用単価を出している会社では全員が辞めるはずです。実際には同じ金額でも、辞める会社と辞めない会社に分かれます。金額の手前に、3つあります。
1. 段取りが決まっていない
朝、現場に着いてから材料がないと分かる。重機が来ない。前の工程が終わっていない。生コンの時間が押して、昼まで何もできない。こういう日が月に何日あるかで、職人の会社への見方は変わります。
体力的にきつい仕事だから辞めるのではありません。外構の職人は、きつい現場そのものは平気です。いちばん効くのは、自分の腕が使えない時間です。手が動いていない時間は、本人にとって「今日は何もしていない日」になります。それが続くと、腕のある人ほど先に出ていきます。

待ってる時間がいちばんしんどいんですよ。体は疲れてないのに、家に帰ったらぐったりしてます。
2. やった分が、誰にも見えていない
雨のあとに一人残って型枠を直した。ブロックの通りが気に入らなくて1本だけ積み直した。施主の質問に現場で答えて、そのまま追加をもらってきた。こういうことは日報にも請求書にも出てきません。
見えていないだけならまだいいのですが、たいていはその逆のことが起きます。段取りよく早く終わらせた人ではなく、遅くまで残っていた人が「よくやっている」と言われる。これを何回か見ると、真面目な職人ほど手を抜くようになります。評価の物差しが時間しかない会社は、結局いちばん残ってほしい人から辞めていきます。
3. 3年後の自分が見えない
若い子が辞める理由で、いま私がいちばん大きいと思っているのがこれです。今日やった作業が、自分の何につながっているのかが分からない。積む、掘る、運ぶ。それは分かる。ただ、この会社にいたら3年後に何ができるようになっているのかが、誰からも示されない。
先ほどの数字で、高卒の3年以内離職率が全産業より高く、大卒が低いのは、ここが効いていると私は見ています。入る前に会社の中身を調べる時間があったかどうか、入ったあとに道筋を説明されたかどうかの差です。

昔は見て覚えろで通りましたけどね。いまは先に道筋を見せないと、こっちが教えるのを出し惜しみしてると思われますよ。
辞めない会社がやっている、地味な3つ
前の日のうちに、明日の段取りを言葉にする
紙でもLINEでも構いません。明日どの現場に何時、誰と誰、何をどこまで、材料は誰が積むか。この4行を前の日に流すだけで、朝の空白がほとんど消えます。特別なことは何もしていませんが、これをやっている会社の職人は「うちは段取りがいい」と言います。職人が会社を評価するときの言葉は、だいたいこの一言です。
現場ごとに人工を数える
誰がどの現場に何日入ったかを、その日のうちに現場に紐づけます。月末にまとめて集計しても遅いです。見積りで見ていた人工と、実際にかかった人工の差が現場単位で見えると、段取りの悪い現場が特定できます。人が辞める会社は、たいてい同じ現場、同じ組み合わせで人工が膨らんでいます。
数え方そのものは一人親方が最初に管理すべき数字は、たった3つに書いたとおりで、人数が少ないうちに癖をつけたほうが楽です。なぜ利益だけが消えるのかという話は外構工事は儲かるのに、なぜ手元に残らないのかにまとめました。手で集計するのがしんどければ、日報と人工と原価を現場ごとに束ねる仕組みを入れてしまったほうが早いです。私たちがGAIQO GENBAを作ったのも、この集計を月末まで待たないためです。
できるようになったことを、その場で言う
半年前はできなかったことが、いまはできている。それを本人に言葉で返すだけです。「去年より墨出しが速い」「この納まりは任せられる」。年に一度の面談でまとめて言うより、現場で30秒で言うほうが効きます。人は、上がっている実感があるうちは辞めません。

辞める理由は人それぞれですが、辞めない理由は3つくらいしかないんです。段取り、評価、伸びている実感。この3つが揃っていれば、多少しんどい現場でも残ります。
そのうえで、単価と給料の順番は間違えない
ここまで書いたことを全部やっても、金額が業界の水準から離れていれば人は出ていきます。いまの水準は外から動いています。国土交通省が2026年2月17日に公表した公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)は、全職種の加重平均が1日25,834円、とび工30,780円、大工30,331円、普通作業員23,605円です。公共工事の積算に使う単価なので民間の請求額そのものではありませんが、職人1人を1日動かすのにいくらかかるかの目安としては、いちばん信用できる数字です。
下からも押されています。大阪府の最低賃金は2026年10月1日から時給1,231円になります。前年は1,177円ですから、1年で54円上がりました。常用単価の相場感は外構工事・エクステリアの職人さん必見!常用単価公開!にまとめています。
ただ、順番を逆にしないでください。給料を先に上げて、そのあと単価を上げようとすると、値上げの根拠が「うちが苦しいから」になります。それでは通りません。単価を直して、粗利が残るようになって、そのうえで給料に回す。順番は単価、粗利、給料です。段取りと評価を直しておくと、この順番が回りはじめたときに、いちばん残ってほしい人が残っています。
この記事のまとめ
- 令和6年の建設業は入職率11.7%・離職率10.0%で、3年ぶりに入職が離職を上回った(厚生労働省「建設労働をめぐる情勢について」令和7年10月15日)
- 高卒で建設業に入った人の3年以内離職率は43.2%(全産業38.4%)、大卒は30.7%(全産業34.9%)。抜けているのは最初の3年
- 辞める理由は給料の手前に3つ。段取りが決まっていない、やった分が見えていない、3年後の自分が見えない
- 辞めない会社は、前日に段取りを言葉にし、現場ごとに人工を数え、できるようになったことをその場で言っている
- 金額の順番は単価、粗利、給料。労務単価は全職種加重平均25,834円(令和8年3月適用・国土交通省2026年2月17日公表)、大阪府の最低賃金は2026年10月1日から1,231円
現場の数字について
その現場、いくら残ったか言えますか。
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