外構職人歴15年。それでも自分ではやらないと決めている工事がある

なんでも自分でやってきた15年で、唯一手を出さなかった仕事
外構屋を15年やってきて、ブロック積みも左官も、塗装もエクステリアの金物取付も、たいていのことは自分の手でこなしてきました。現場に出て、道具を持って、体で覚える。そうやって技術を広げてきたのが自分のやり方です。
そんな中で、唯一「自分ではやらない」と決めている工事があります。タイル工事です。

社長、ブロックも左官も自分でやるのに、タイルだけは頼むんですか。逆じゃないんですか。

逆に見えるやろ。でもタイルは、ちょっとの狂いも隠せへん仕事や。だから自分ではやらんと決めとる。
「誤魔化しが効くか、効かないか」で線を引く
ブロックや土間コンクリートは、多少の粗があっても仕上げの段階で目立たなくできますし、経験があれば現場合わせで帳尻を合わせられる幅があります。ところがタイルは違います。割付の芯出しがずれれば端の半端物が目立ち、目地の通りが1本でも曲がれば全体の印象が崩れる。下地の精度がそのまま仕上がりに出るので、経験の浅い手ではごまかしようがありません。
完成したタイル面を見ると、素人目にもプロの仕事と半端な仕事の差がはっきりわかります。逆に言えば、そこまで差が出る工事だからこそ、専門でやり続けている職人には敵わないと素直に思っています。タイル屋さんの仕事は、見ていて惚れ惚れするくらいカッコいい仕事です。
経営者として、この線引きが利益にもつながる理由
これは職人としての美学だけの話ではなく、経営判断としても理にかなっていると考えています。自社で何でも抱え込もうとすると、精度が求められる工程ほど手戻りのリスクが上がります。やり直しが発生すれば、材料費も人工も余計にかかり、結局は利益を削ることになります。
「自分でやれば外注費が浮く」という発想は、誤魔化しの効かない工程では逆効果になりやすいものです。専門の職人に任せたほうが、仕上がりのクレームも手直しの工数も減り、結果として粗利は安定します。何を内製し、何を専門職に渡すかの線引きは、会社の利益率を左右する経営判断のひとつです。

何でも自社でやろうとする若い会社ほど、精度が要る工程で手直しに追われて利益を落としとる。線引きは早いうちに決めといたほうがええ。
誰に任せるかも、線引きと同じくらい大事
専門職に渡すと決めても、任せる相手を誰にするかで結果は大きく変わります。付き合いの長さだけで選ぶのではなく、実際に仕上がった現場を見せてもらう、割付の相談をした時の返答の速さと具体性を見る、というのが自分なりの見極め方です。良いタイル屋さんは、割付の相談をした段階で「ここは半端物が出るので、この位置で調整しましょう」と先回りした提案をしてくれます。逆に、言われたことだけをこなす職人には、細かい部分の判断を任せきれません。
現場で実際にあった話ですが、お客様から「タイルの目地がまっすぐで気持ちいい」という感想をいただいたことがあります。施主様は工法の違いまでは意識していませんが、仕上がりの精度は必ず見ています。自分たちが手を出さずに専門職へ任せた判断が、そのままお客様の満足につながった場面でした。

割付の相談したときの返しでその職人の力量はだいたいわかる。先回りして提案してくるかどうかや。
線引きの基準は「やり直しがきくか」「量で経験を積めるか」
自社でやる工事と、専門職に任せる工事の線引きは、次の2点で考えています。ひとつは、多少のズレを仕上げの過程で吸収できるか。もうひとつは、その工程を月に何度もこなして経験値を積める量があるかどうかです。タイル工事は現場ごとに割付も下地の条件も変わり、かつ一度貼れば簡単にはやり直せません。経験の絶対量で差がつく工事だからこそ、専門でやり込んでいる職人にはかなわないと判断しています。
この線引きは会社によって変わっていいと思っています。大事なのは「自分たちは何でもできる」と思い込まないことです。誤魔化しが効かない工程を見極めて、そこは早めに専門職へ渡す。それが結果として、会社としての技術の見せどころも、利益も守ることにつながります。何年経っても手を抜かない拘りを持つ職人ほど、こういう線引きに自覚的だと感じています。
職人技をどう次の世代に継いでいくかという話にもつながりますが、それはまた別の機会に。関連する話として誰にも真似できない職人技をどう次に繋ぐかも、あわせて読んでみてください。
「何でも自分でできる会社」を目指すのではなく、「どこを外に任せれば会社全体の仕上がりと利益が上がるか」を見極める会社のほうが、長く現場を続けられると考えています。この線引きに、正解は一つではありません。ただ、迷ったときの判断軸は持っておいたほうがいいというのが、15年やってきての実感です。
現場の数字について
その現場、いくら残ったか言えますか。
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