業界の裏側を発信することが、なぜ会社の信頼につながるのか

この業界に入ってもう20年近くになります。現場も積み上げたし、会社の規模も大きくしてきました。でもある時期、ふと「自分は結局なにを外の人に残してきたんだろう」と考えて、何も残っていないことに気づきました。現場の中でしか評価されない積み重ねだったんです。そこから、業界の裏側をコンテンツとして発信することに決めました。

最初は「社長が暇なんか」って言われましたよ。でも暇じゃないです。これは営業と同じくらい大事な仕事だと思ってやってます。
発信を始めてみて分かったのは、「業界の裏側」と呼んでいるものの正体が、実は業界の人間なら当たり前に知っている話ばかりだということです。見積りの組み立て方、職人の手配の順番、工程をどの順でやると手直しが減るか。別に悪いことを隠していたわけじゃなくて、「わざわざ説明しなくてもいいだろう」という温度感で、暗黙のルールのように閉じていただけなんだと思います。
「全部さらけ出す」が信頼になる理由
発信を続けていて一番驚いたのは、コメントでいちばん多くいただく言葉が「このコンテンツは信頼できる」「嘘がないから」というものだったことです。自分としては、特別なことを言っているつもりはなくて、現場で実際に見ている判断基準をそのまま話しているだけです。それが珍しく見えるくらい、この業界の情報は外に向かって閉じていたんだと思います。

え、それって普通に手の内見せてるってことですよね。パクられたりしないんですか?

よく聞かれます。でも、出して困る情報と、出しても困らない情報は、はじめから分けて考えてます。
出す情報と出さない情報の線引き
発信する前に毎回考えているのは、「これは判断基準の話か、単価や仕入れの話か」という一点です。現場で何を見て決めているか、どういう順番で工事を進めると後で後悔しないか、お客さんがどこで失敗しやすいか。こういう話は出します。一方で、仕入れ値や値引き率、取引先の名前、数年前の単価のような数字は出しません。そこを出してしまうと自社の利益構造がそのまま読まれてしまうので、ここは毎回悩んで判断するのではなく、最初から線として決めています。
元請けからのマージンや紹介料がどこで抜かれているかという話も、「数字そのもの」ではなく「見るべき構造」までしか出さないようにしています。詳しくは元請けへのマージンと紹介料。いくら抜かれているのかを知らないまま受けていないかにも書きました。

わしらの世代は、腕は隠すもんやと思ってきたからな。最初はちょっと抵抗あったわ。

でも隠すより見せた方が、ちゃんとやってる現場ほど強いですよね。
発信を始めてから変わったこと
発信を続けて一番変わったのは、問い合わせの質です。価格だけを見て比較してくる人より、「この考え方に納得したから頼みたい」という人が増えました。これは営業の立場で見てもすごく効率がいい話で、最初の説明に使う時間が減って、話がかみ合うところから商談が始まります。
仕上げの技術を隠さずに出すという考え方も、根っこは同じです。他社と差がつく仕上げ技術を、あえて表に出す価値でも書きましたが、「見せても真似できない部分」と「見せても困らない部分」を分けて考えれば、情報を出すことは弱みにはなりません。

工程を見せるのも最初は嫌でしたけど、ちゃんと見せた方がクレームも減った気がします。
現場の工程をそのまま共有するという考え方は、洗い出し仕上げの出来を左右するのは何か。工程を惜しみなく共有する理由で書いた通りです。見せること自体が、品質を証明する手段になることもあります。
まとめ
業界の裏側を出すことに、最初から正解があったわけではありません。ただ、「嘘がないから信頼できる」と言ってもらえる回数が増えるたびに、この判断は間違っていなかったと感じています。出す情報と出さない情報の線を自分の会社の中であらかじめ決めておけば、発信は怖いものではなくなります。

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