職人の給料を上げた会社が、次にやったこと

職人の給料を上げる。ここまでは、どこの会社も一度は考えます。差がつくのはそのあとです。上げただけで満足した会社と、上げたあとに何かを変えた会社。同じように給料を上げても、半年後にはっきり違う結果になっているのを、私はこれまで何社も見てきました。
給料を上げて終わった会社、続けた会社
国土交通省が2026年2月17日に公表した「公共工事設計労務単価」(令和8年3月適用)では、全職種の加重平均が1日25,834円になりました。大阪府の最低賃金も2026年10月1日から1,231円になります(前年1,177円)。人にかかる金額は毎年上がっていますから、給料を上げること自体はもう選択肢ではなく前提です。問題は、そのあとです。

社長、うちも去年給料を上げましたよね。でも、それだけで辞める人は減らないんですか。

減らないですね。給料は不満を消す道具であって、居続ける理由を作る道具ではないからです。上げた瞬間は喜ばれますが、半年経てばそれが当たり前になります。職人が辞める会社と辞めない会社の記事でも書きましたが、辞める理由の多くは金額そのものより、その先が見えないことです。
上げたあとに変わったのは「見える化」
給料を上げたあとも定着率が上がり続けた会社に共通していたのは、上げた金額の中身を職人本人に見せていたことです。何にいくら払っているかを会社だけが把握していて、職人は総支給額しか知らない状態だと、上がった実感が長続きしません。逆に、単価がいくらで、資格手当がいくらで、現場の成績がどう反映されるかを本人が知っていると、給料は「もらうもの」から「増やせるもの」に変わります。

若い衆に聞くと、金額より「これ以上上がる余地があるかどうか」を見てますね。天井が見えた瞬間に、次を探し始めます。
天井を見せない一番の方法は、昇給の基準を数字で示すことです。勤続年数だけで上げるのではなく、何ができるようになったら、何人日を任されるようになったら上がるのかを、感覚ではなく基準として渡す。基準がない会社ほど、上げ幅がその場の空気で決まり、職人同士で比べたときに不公平感だけが残ります。
粗利を先に上げないと、給料は戻る
もう一つの分かれ目は、給料を上げる前に粗利を上げていたかどうかです。売上を変えずに給料だけ上げると、その分は会社の利益から出ていきます。利益が薄い状態でそれをやると、翌年の繁忙期に人が足りなくなったときに、今度は上げる原資がありません。結局、次の年は上げられず、上げなかった年だけが職人の記憶に残ります。

経理から見ると、給料を上げた年に粗利も一緒に上がっている会社は、翌年も安心して上げられます。順番が逆の会社は、翌年の昇給の話し合いが毎回苦しくなります。
粗利を先に上げる方法はいくつかありますが、いちばん早いのは外構工事は儲かるのに、なぜ手元に残らないのかで書いた、現場ごとの原価を数字で管理することです。日報から現場ごとの粗利まで自動で出す仕組みを入れている会社は、給料に回せる原資がその場で見えるので、上げる判断も速くなります。どんぶり勘定のままでは、給料を上げる原資がどれだけあるのか、そもそも会社自身が分かりません。
定着率が上がった会社がやった3つ
給料を上げたあと、実際に定着率が上がった会社を見ていくと、やっていることはだいたい3つに絞られます。
1. 昇給の基準を紙にした。感覚ではなく、何ができれば上がるかを職人本人が読める形にしました。基準がある会社は、上げなかった年でも「なぜ今回は上がらなかったか」を説明できます。
2. 上げた分を、成績で差をつけた。全員一律で上げるのではなく、現場の粗利や工期遵守など、見える成果に応じて差をつけました。一律で上げると、頑張った人ほど翌年の期待値が下がります。
3. 上げた理由を口頭でも伝えた。給与明細の数字が変わるだけでは伝わりません。何を評価して上げたのかを、短くてもいいので本人に直接話しました。常用単価を公開した記事でも触れましたが、外から見える数字と、本人に伝わる言葉は別物です。

現場にいると分かりますが、給料が上がったこと自体より、上がった理由を社長の口から聞けたかどうかで、そのあとの働き方が変わる職人は多いです。
逆に言えば、この3つをやらずに金額だけ上げても、効果は数ヶ月しか続きません。給与・年収を公開した記事で書いたとおり、外構業は職人本人が他社の給料を知る機会が意外と多い業界です。上げた金額そのものより、上げ方のほうが長く効きます。
この記事のまとめ
- 公共工事設計労務単価は全職種加重平均25,834円(令和8年3月適用・国土交通省2026年2月17日公表)、大阪府の最低賃金は2026年10月1日から1,231円。人件費は毎年上がる前提で考える
- 給料を上げただけでは定着率は上がらない。上げた中身を職人本人に見せる「見える化」が続くかどうかが分かれ目
- 給料より先に粗利を上げておかないと、翌年また上げられず、上げなかった年だけが記憶に残る
- 定着率が上がった会社がやったのは、昇給基準を紙にする、成績で差をつける、理由を口頭で伝えるの3つ
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