【業界向け】見積りが遅い会社は、なぜ利益も薄いのか

見積りが遅い会社は受注が取れない。これはよく言われる話です。ただ、20年この業界を見てきて思うのは、遅い会社は受注率が低いだけではなく、取れた現場の利益まで薄いということです。しかも両方とも、もとをたどると同じ一つの原因から出ています。今日はその話をします。
見積りが出るまでの日数は、その会社の段取りの通信簿
私が施主の立場で業者を選ぶなら、まず見積りが何日で出てくるかを見ます。目安は自分の中で決めていて、100万円くらいの外構工事なら1週間以内、300万円くらいなら10日以内です。それより遅い会社は、少々金額が高くても他に頼んだほうが身のためだと思っています。急ぐ現場なら、2日3日でも出せますから。
誤解のないように書いておくと、これは雑に出せという話ではありません。提案の中身がプロの水準にあることが前提で、そのうえで速いかどうかを見ています。速さは丁寧さの反対語ではありません。段取りができているかどうかの結果です。

社長、うちは丁寧にやっているから時間がかかるんです、と言う会社もありますよね。

丁寧なだけなら、そこまで時間はかかりません。時間がかかるのは、毎回はじめから考え直しているからです。丁寧さと段取りの悪さは別の話です。
遅い原因は拾い出しではなく、探している時間
見積りに時間がかかっている会社の中を見せてもらうと、図面を拾う作業そのものは、実はそれほど時間を食っていません。消えているのは探している時間です。この商品の定価はいくらだったか。前回この工事をいくらで出したか。あの職人さんの常用単価は上がったのか。どれも社内のどこかにはあるのに、誰かに聞かないと出てこない。
この状態になると、見積りを作れる人が社内で1人か2人に固定されます。その人が現場に出た日は、見積りが止まります。止まっている間に、他社の見積書がお客様の手元に届きます。

現場に出ている日に、あの単価いくらでしたっけ、と電話がかかってくるんです。こっちは重機の上ですから、うろ覚えで答えてしまう。
遅い会社が薄利になる、3つの経路
ここからが本題です。遅さは受注率だけでなく、利益率にも効いてきます。見てきた限り、経路は3つあります。
1. 迷った分だけ、金額が丸まる。探しても出てこないと、最後は「だいたいこれくらい」で入れることになります。そして丸めるとき、人は高い側には丸めません。相手の顔が浮かぶので、必ず低い側に丸めます。1行なら小さな額でも、1枚の見積りで10行やれば、そのまま粗利が消えます。
2. 待たせた負い目が、値引きに変わる。2週間待たせた見積りを持っていくと、こちらから先に「お待たせしたので」と口が動きます。値引きの理由が工事の中身ではなく、自分の遅さになってしまう。これがいちばんもったいない。値引きするなら、仕様を落とすか数量を削るか、理由のある削り方をすべきです。
3. 着工が後ろにずれて、人工が重なる。見積りが遅れれば契約も遅れ、着工も遅れます。ずれた先が繁忙期だと、応援を入れるか工期を詰めるかのどちらかになります。どちらも原価が上がります。見積りの遅れは、3か月後の現場の原価として請求書が回ってきます。

秋にずれ込んだ現場は、たいてい人が足りません。応援を1人入れた時点で、その現場の利益は最初の見積りとは別物になっています。
外構工事は儲かるのに、なぜ手元に残らないのかでも書きましたが、外構業で会社が苦しくなるのは仕事がないときではなく、仕事が多いのに残らないときです。見積りの遅さは、その「残らない」を裏で作っている側の話です。
人にかかる金額が上がった今、遅さの代金も上がっている
国土交通省が2026年2月17日に公表した公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)では、全職種の加重平均が1日25,834円になりました。職種別ではとび工が30,780円、普通作業員が23,605円です。公共工事の積算に使う単価なので民間の請求額そのものではありませんが、人を1日動かすのにいくらかかるかの目安としては、いちばん信用できる数字です。
下から押し上げる力も強く、大阪府の最低賃金は2026年10月1日から時給1,231円になります。前年は1,177円でした。現場の職人だけでなく、事務や補助の人件費もこの上に乗ってきます。
つまり、見積りを作る人が社内で単価を探して回っている1時間にも、去年より高い値札が付いているということです。同じ非効率でも、値段が上がっている。ここを放っておく余裕は、もうありません。
明日から縮められるのは、この3か所
1. 単価の置き場所を1つにする。商品の定価、施工費、常用単価。この3つがどこにあるかを決めて、そこ以外を見ないと決めるだけで、探す時間はかなり減ります。大事なのは完璧な表を作ることではなく、置き場所を1つにすることです。表の精度は使いながら上げれば済みます。
2. 出す順番を決める。全部そろってから出すのをやめて、概算を先、明細を後にします。2回目の打ち合わせでは必ず概算を出す、と社内で決めてしまうのが早いです。お客様が知りたいのは、まず桁と幅です。1円まで合った表を2週間待つより、幅のある数字が3日で出るほうが喜ばれます。
3. 終わった現場の実績を、次の見積りに戻す。これが一番効きます。見積りで何人日と見て、実際に何人日かかったか。この差を現場ごとに残しておけば、次の似た現場は考えずに出せます。一人親方が最初に管理すべき数字で書いた3つと、見るところは同じです。私たちがGAIQO GENBAを作ったのも、日報と人工と原価を現場が動いているうちに拾って、次の見積りに返すためでした。月末にまとめて集計しても、直せる現場はもう終わっています。

経理から見ると、見積りが遅い月は請求も遅いんです。工事は終わっているのに、入金が翌々月になる。
ここは本当に見落とされがちです。見積りの遅れは、粗利だけでなく資金繰りにも出ます。同じ売上でも、入金が1か月ずれれば、その分だけ材料の支払いを自分の体力で持つことになります。
速さは、人ではなく仕組みで出す
見積りが速い会社は、速い人がいる会社ではありません。速い人がいるだけの会社は、その人が辞めた日から遅い会社に戻ります。職人が辞める会社と辞めない会社でも書きましたが、人に依存した仕組みは、人が抜けた瞬間に全部止まります。
単価の置き場所、出す順番、実績の戻し方。この3つを紙1枚で決めて、新しく入った人がその紙を見れば同じ速さで出せる状態を作る。そこまでやってはじめて、速さが会社の資産になります。
この記事のまとめ
- 見積りの目安は100万円くらいなら1週間以内、300万円くらいなら10日以内。中身がプロの水準にあることが前提
- 遅さの原因は拾い出しではなく、単価と前例を探している時間
- 遅い会社が薄利になる経路は3つ。低い側への丸め、待たせた負い目の値引き、着工がずれて重なる人工
- 人にかかる金額は上がっている。公共工事設計労務単価は全職種加重平均25,834円、とび工30,780円、普通作業員23,605円(令和8年3月適用・国土交通省2026年2月17日公表)。大阪府の最低賃金は2026年10月1日から1,231円
- 縮める順番は、単価の置き場所を1つにする、概算を先に出す、終わった現場の実績を次に戻す
- 速さは人ではなく仕組みで出す。人に依存した速さは、その人が抜けた日に消える
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その現場、いくら残ったか言えますか。
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