一人親方から法人化するタイミングの見きわめ方

一人親方のままでいいのか。法人にするタイミングをどう見ているか
加盟店さんや若い職人さんから、「そろそろ法人にした方がいいですか」と聞かれることがよくあります。答えはいつも同じで、売上の額だけでは決めていません。私が見ているのは、法人でないと前に進めない場面が実際に出てきたかどうかです。今日はその見きわめ方を整理します。
元請から「法人でないと現場に入れない」と言われた瞬間
いちばん分かりやすいサインは、大きい元請やハウスメーカーの下請けに入ろうとしたときに、個人事業主では登録できないと言われることです。与信審査の段階で、法人でなければ契約書そのものを作れない会社は珍しくありません。付き合いのある工務店だけで仕事が回っていたうちは気にならなかったのに、取引先が広がった途端にこの壁にぶつかります。

一人親方のままでも、真面目にやっていれば信用してもらえると思っていました。

腕と人柄で信用してくれる相手と、書類の形式でしか判断しない相手がいます。取引先が後者に変わった時点で、法人にするかどうかは選ぶ余地がなくなります。
人を雇うと決めた日が、もうひとつの分岐点
自分ひととおで現場を回している間は、一人親方のままで十分です。判断が変わるのは、職人を一人でも雇うと決めた日です。雇用契約を結び、社会保険の手続きをして、給料を毎月払う。この体制を個人事業のまま続けている会社もありますが、雇う人数が増えるほど、法人の方が制度と噛み合ってきます。
人を雇ってからは、現場ごとの原価と人工の管理も今まで以上に大事になります。自分の頭の中で人工を数えられたのは、自分ひとりで動いていたからです。GAIQO GENBAのような現場管理システムを使う会社が増えているのも、雇う人数が増えた分だけ、感覚では追えなくなるからです。

現場だけ見ていると気づきにくいですが、人を雇った瞬間から、会社は「自分の腕」じゃなくて「仕組み」で動くようになるんですよ。
建設業許可を取りたくなったとき
建設業許可は個人事業主でも取得できます。ただ、代表者が変わったときの許可の引き継ぎや、将来の事業承継、銀行からの評価まで考えると、許可を取るタイミングで法人にしておいた方が後で困らない、というのが実感です。許可を取ってから法人成りすると、許可を取り直す手間が発生することもあるので、許可を検討し始めた段階で法人化もセットで考えます。工事の受注できる規模を広げる話は一人親方が最初に管理すべき数字は、たった3つにも書いたとおり、まず自分の数字を把握できていることが前提です。
インボイス制度は、法人化の背中を押した
もうひとつ、ここ数年で増えたのが税制をきっかけにした相談です。消費税は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じ、免税事業者ではいられなくなります(国税庁「No.6501 納税義務の免除」)。インボイス制度が始まってからは、免税事業者のままだと元請が仕入税額控除を受けられず、取引そのものを敬遠される場面が出てきました。課税事業者になるタイミングと法人化のタイミングを合わせて検討する人が、体感で明らかに増えています。
ここから先は税負担の比較になるので、個人のまま課税事業者になる場合と法人にする場合のどちらが有利かは、必ず顧問税理士に試算してもらってください。私がここで言えるのは、検討する入り口が同じタイミングで来る、ということまで��す。

数字の比較は税理士さんの領域です。私たちが見るのは、法人にしたあと事務の手間がどれだけ増えるかという実務の方ですね。
法人にしない、という判断も正解になる
ここまで法人化のきっかけを並べましたが、法人にしない方がいい人もいます。事務負担が増え、社会保険料の会社負担も発生します。今のお客さんと今の仕事の広さで十分に食べていけていて、これ以上元請を広げるつもりがないなら、一人親方のまま身軽にしておく方が理にかなっています。下請けだけで終わらない働き方を目指す段階と、法人にする段階は、実は別の話です。無理に「そろそろ法人」と焦る必要はありません。

法人化は目的じゃなく手段です。信用が要る仕事が増えたか、人を雇う体制が要るようになったか。ここが変わっていないなら、急ぐ話ではありません。起業に必要なものを揃えた延長線上に、法人化のタイミングもあります。
この記事のまとめ
- 売上の額より先に、元請から「法人でないと契約できない」と言われた場面があるかを見る
- 職人を一人でも雇うと決めた日が、制度面での分岐点になりやすい
- 建設業許可を検討し始めた段階で、法人化もセットで考える
- 消費税は基準期間の課税売上高1,000万円超で課税事業者になる(国税庁)。インボイス制度で課税事業者になるタイミングと法人化を合わせて検討する人が増えている。税負担の比較は必ず税理士に試算してもらう
- 今の仕事の広さで十分なら、一人親方のまま身軽でいる選択も正解
あわせて読みたい
現場の数字について
その現場、いくら残ったか言えますか。
日報を入力するだけで、勤怠も給与も、現場ごとの原価と利益まで自動で集計。外構・エクステリアの現場に特化した現場管理システムです。
GAIQO GENBA を見る →
最後まで読んでいただいてありがとうございました。今後もためになる記事を書いていきます!励みになるますのでコメントもお願いします!